黒龍来訊





は ここ何日か ある事を考えていた。

そのため 何時になく上の空な態度が続き 悟空も三蔵も少々機嫌が悪い。

三蔵はいつも不機嫌なのだが 悟空に至っても 

を見ながら ほっぺを膨らましている。

それでも の思考はやまず 2人の機嫌の悪さを無視した形で 

続けられるのだった。

八戒と悟浄はその様子に バックミラーの中で 目を合わせると 苦笑した。

八戒は 今夜の宿ででも に聞いて見ましょうかと 心の中で1人つぶやいた。

このままでは 悟空どころか 三蔵の機嫌も

益々降下の一途をたどるであろう事は 予想がつく。

他の事でなら がとりなしたり 庇ったりしてくれるのだが、

そののことで 機嫌が悪くなった場合、

被害者は 悟浄と悟空の2人になるだろう。

悟空がにも邪険にされ三蔵にも怒られるというのは、

あまりにも可愛そうだ。

それに 八戒はが何をそんなに考えているのかという事に 興味が湧いた。





宿の洗面所で 八戒とは 洗濯をしていた。

 ここ2〜3日 何か悩み事でもあるんですか?」

「え? どうしてそんなこと聞くの?」

「だって  何か悩んでいるというか 考えているでしょう?

三蔵と2人の部屋では どうかは知りませんが、

悟空の事は 明らかに 無視していますよ。

今日もジープの上で 呼びかけているのに 返事もしていませんでしたし、

頬を膨らませて拗ねていたのにも 気が付いていないのでしょう?

三蔵も 何時になく 機嫌悪そうでしたよ。」

「やだ 本当に?

私としては どうするか決まってから 話そうと思っていたんだけど、

悟空と悟浄に迷惑を掛けないうちに 何とかしなくちゃね。

八戒 教えてくれてありがとう。気をつけるわ。」

は 洗濯を終えて 八戒の隣から立ち去った。

「だから 何をそんなに 考えているのか 知りたかったんですけどね。

教えては もらえないんでしょうか・・・・。」

八戒は 苦笑しながら 洗濯を片付けた。




は ここの所 自分のせいで 三蔵たちを危険にさらしている事を、

申し訳ない思いでいるのだったが せめて 三蔵達が 後ろの自分を気にしないで

戦えるように 護衛を付けようかと考えていたのだった。

天界でも公主で しかも神女である 護衛の神獣や守護神も持っている。

この旅に出る前は 常にそれらに守ってもらっていた。

しかし 誰を呼び寄せて 任に付けるかを 悩んでいたのである。

を守るために存在する者は 何匹も何人もいる。

八戒や悟空、悟浄は 誰が来ようとも それほど反対もしないだろうし、

仲間として同行させてくれるだろう。

だが 三蔵はそう簡単にはいかないだろうと は思っていた。

それで 悩んでいたのである。





守護神は 人間ではないが 一応 人型を取って現れる。

普段は 何かに陰伏していてもらえばいいと思うし、邪魔にはならないだろう。

だが が神女のせいか 性別のないはずの守護神だが 

どうしても 男性の姿が多い。

そうなると 三蔵が決して面白く思わないのは 分かりきっている。

ここは 神獣の方が無難だろうな。

だが 神獣だとて いろんな種類の子がいるし、

三蔵一行には ジープという獣がいるので、

相性というものを 考慮しなければならないだろう。

そんな事を考えているものだから、

三蔵と悟空の機嫌を損ねてしまった なのだった。

しかし 八戒にああ言われた以上は、

何匹かの候補のうちの1匹に決めた方がいいだろうと

判断した は、水脈を使って 使令の神獣を1匹 呼び寄せた。




その日の夕飯時。

「みんな 聞いて欲しいことがあるの。

ここの所 私が捕まったり 病に臥せったりと 迷惑ばかり掛けているし、

先日のように 引き離されたりして 私が1人になる可能性も否定できないと思うの、

これから 西に近付くにしたがって 敵も増えて 強くなるよね。

そんなに 簡単にやられないと思うし がんばるつもりなんだけれど、

みんなが 後ろの私を気にして 隙を作らないとは言えないでしょう。

だから 私の守護に神獣を1匹 呼び寄せたので、同行の許しをもらいたいの。」

4人に言っている形だが、許しが必要というのは 三蔵に言っているのだと

八戒と悟浄と悟空は 了解している。

「ちっ、勝手にしろ。」

「ありがとうございます。」

「「「 よかったな。」」」
     (よかったですね。)




「で その守護獣は 何時来るんだ? どんな奴だ? 強いのか?」

悟空は うれしそうに 質問攻めにした。

「はい 明日の朝 この街を出た所で 合流するように言ってあります。

ジープとの相性を考えて 黒龍を呼び寄せました。

私の配下の神獣の中では だんとつに強い1匹ですよ。

それに 幼獣の時から育てているので とても懐いていて 優しい子です。

悟空は きっと気に入ると思いますよ。可愛がってやってくださいね。」

「うん 任せておいてよ。」

 ジープにも気を配っていただいて ありがとうございます。

が優しい子だと言うのなら、きっと ジープともすぐに打ち解けるでしょう。」

八戒の言葉に は笑顔で返した。

悟空は の言う可愛い黒龍を 頭の中で想像した。

ジープを黒く塗った奴を・・・・・。





しかし 翌日。

悟空の可愛い想像は 木っ端微塵に 砕かれた。

街から離れることしばし 広い草原に 黒い小山があって それを遠目に見たは、

八戒に そのふもとにジープを止めて欲しいと言った。

ジープを降りたは 黒い小山に向かって 「これが 黒龍のリムジンです。

リムジン ご苦労様でした。起きてご挨拶しなさい。」

そのの声に 黒い小山は 羽根を広げて起き上がり 形は白龍と同じのでも大きさは

天と地ほども違う黒い龍となって 姿を見せた。

4人は 何も言えないままに とリムジンを見比べている。

「いくらなんでも ジープには乗れないし、宿も困るだろう。」と 三蔵がつぶやけば、

「リムジン こうもり位になりなさい。」と は命じた。

すると 音もなくその黒い龍は こうもり位まで縮み パタパタと飛ぶとの肩にとまった。




「リムジン 旅の仲間を紹介しますね。

こちらが 玄奘三蔵法師様 三蔵です。

それから この方が 猪八戒さん 八戒です、白竜のジープは 八戒のパートナーです。

この方は 沙悟浄さん、悟浄ですよ。

それに 孫悟空、悟空には 天界で遊んでもらったことがあるのですが 覚えていますか?

白竜のジープは 変化して私たちを 運んでくれています。

仲良くしてくださいね。」

リムジンは 話が終わると 悟空の肩に飛んでいった。

悟空は 手を差し出して 乗せると、リムジンののど元を撫でてやっている。

「リムジンとは 立派な名前ですね。」

「はい。黒くて大きい立派な乗り物 そんな感じです。」

「何かに変化できますか?」

「さあ どうでしょうか、必要なかったので やらせてみた事は無いのですが、

今度機会があったら 何かに変化させて見ましょう。大きさは自由自在ですけどね。」




こうして 黒龍のリムジンは 三蔵一行の仲間になった。

戦闘中は を守り 暇な時には 悟空の遊び相手を務める。

なかなかの苦労人である。

ジープとも 仲が良く 眠る時には 一緒に寄り添って眠る微笑ましさだ。

4人は 自然に リムジンを受け入れた。

リムジンの活躍するお話は またいずれ。







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